中崎町に、"素敵な時間"を束ねる花屋。
ー中崎町の花屋『beau cadeau(ボ・カドー)』爲本さんに聞く、22歳ではじめた"花を渡す文化"と、これからー
梅田のすぐ隣、路地裏に古い家並みが残る中崎町。
古着屋(衣)が軒を連ね、古民家カフェ(食)が湯気を立て、そして昔からこの街に暮らす人々(住)の息づかいも残っている。衣・食・住が小さな路地に溶け合う、そんな街だ。
人通りのある通りから、ふっと左へ折れてみる。
入り組んだ路地を少し進むと、建物の1階、その左側に、小さな花屋『beau cadeau(ボ・カドー)』がある。
店主の爲本さんは現在24歳。スタッフとふたりで、この店を切り盛りしている。
男性が店に立つ花屋は、中崎町でも、いや街を歩いていても、なかなか出会わない。
その爲本さんは、自分の店のことを、こう言った。
『花を売る店じゃないんです。素敵な時間を贈る店なんです』
今回は、この言葉にこめられた想いと、彼が中崎町を選んだ理由、そしてこれからについて伺った。


花は、忘れられてしまった一日への、小さな贈り物から
なぜ、人は花を贈るのだろう。
その問いの答えは、ふたりの間の、ささやかな出来事から始まっていた。
お店をはじめたきっかけは?
爲本さん.きっかけは、ほんとに小さなことなんです。
当時付き合っていた方との記念日を、相手がうっかり忘れてしまって。
そのことが自分の中ではすごくショックで、このままじゃいけないなと。
ちょうどその頃、花屋をやっている母の縁で、プリザーブドフラワーがいいんじゃないかなと思いつきました。
そうしてプレゼントしたところ、相手にすごく喜んでもらえて。
それからは毎月送ることに決めたんです。
物語は、ここから動きはじめた。
いま、beau cadeauの店内には、様々な色のプリザーブドフラワーが並ぶ。
プロポーズ。告白。結婚記念日。母の日のカーネーション。
誰かに想いを伝えたいというお客さんに、爲本さんはそっと寄り添う。
プロポーズに成功した男性が、後日また店を訪れて、こう言ったこともあるそうだ。
『これからは毎月、彼女に花を贈ります』
「素敵な時間を贈る」というのは、たぶん、こういうことだ。
爲本さんが花とともに手渡しているのは、「忘れないでいる」という気持ち。
誰かに、自分の想いをちゃんと届けたい──という、その時間のほうなのだ。

なぜ、若い挑戦者たちは、この街を選ぶのか
数ある街の中で、なぜ中崎町だったんですか?
爲本さん.大学時代から、休みの日にはカフェや古着屋を巡るのが好きで、この街の雰囲気がとても気に入っていたんです。
写真映えする街並みに、若いカップルがよく歩いている。
男性が花を渡す文化を広めたい自分の店と、相性がいいと思ったんです。
相性がいい。その直感だけで、当時22歳の青年は、この路地裏を選んだ。
なぜ、若い挑戦者たちは、中崎町にひとり、またひとりと集まってくるのだろう。
中崎町という街自身も、まだその答えを知らない。
ただ、こうしてひとつ店が増えるたびに、街は少しずつ、自分の『なぜ』を書き足していく。

22歳という若さは、武器ではなく覚悟だった
開業は、大学4年生の夏。会社員になる道は、選ばなかった。
誰かの屋号の下ではなく、自分の決めた屋号の意味は、「素敵な贈り物」。
22歳で、自分の店を持つ。その背中を押したものは、なんだったのだろう。
その問いは、この記事を読むあなたが、自分自身に投げ返すべき問いかもしれない。
22歳でなくてもいい。32歳でも、42歳でも。
いま立ち止まっているあなたの胸の中にも、同じ問いが、そっと眠っている。
「働いている感覚は、あまりないんです」
一日は、どんな流れですか?
爲本さん.営業は12時から18時までなんですけど、僕の一日は9時から始まります。
仕入れて、束ねて、整えて。18時に閉めたあとも、19時まではSNSの更新と、全国への発送が続きます。
実質、10時間労働。それでも、爲本さんはこう言う。
爲本さん."働いている"っていう感覚は、あんまりないんです。やりたいことの、延長なんです。
ゴールデンウィークの4日間で、店を訪れた人は、約750人。
『数字』だと言ってしまえば、それまでだ。
けれど、750人ということは、750通りの「誰かに渡したい気持ち」が、この小さな店の扉を押した、ということでもある。
これからと、一歩を踏み出す人へ
これから、やってみたいことは?
爲本さん.もう少し店舗を広げて、男性が気軽に入れる、大らかな花屋にしたいです。
中崎町を起点に、学生の多い街へ、そして全国へ。香水とのコラボや、新しい商品も、つくっていきたいですね。
20代で起業を考えている人へ、ひとこと。
爲本さんは、少しだけ間を置いて、こう言った。
爲本さん.失敗って、放置しなければ、失敗じゃないんです。
試行錯誤を続けていれば、結果的に、お客さんが集まる流れができていく。
SNSも、最初は友人しか見てくれませんでした。それでも、率直に発信し続けたから、いまがあるんだと思います。
放置しなければ、失敗じゃない。
この一行を、誰かのために、書き写しておきたくなった。
あなたの『なぜ』は、なんですか
なぜ、人は花を贈るのだろう。
なぜ、若い挑戦者たちは、中崎町を選ぶのだろう。
なぜ、22歳で、自分の屋号を掲げられたのだろう。
なぜ、彼は「働いている感覚がない」と言えるのだろう。
四つの『なぜ』は、いつのまにか、ひとつの問いに重なっていく。
── あなたの『なぜ』は、なんですか。── そして、この記事を読んだ、あなたへ
もし、ここまで読んで、ふと誰かの顔が浮かんだなら。
それはきっと、あなたの中にも「渡したい気持ち」が、そっと眠っていたということ。
大きな記念日じゃなくていい。立派な理由も、あとからでいい。
梅田から、ほんの少し足をのばして。人通りのある通りを、ちょっとだけ左に折れてみてほしい。
入り組んだ路地の奥、建物の1階の左側。その小さな扉を開ければ、24歳の店主が、あなたの"素敵な時間"を、一緒に束ねてくれるだろう。
花を買いに、ではなく ── 大切な誰かを想う時間を、受け取りに。
その一歩が、あなたと、あなたの大切な人と、そして爲本さんの、新しい『なぜ』のはじまりになる。
『beau cadeau(ボ・カドー)』
中崎町の路地の奥で、"素敵な時間"を束ねている小さな花屋。
店主の爲本さんは24歳。記念日をひとつ相手に忘れられたという経験から、花の道へ入った青年だ。
花を選びにくるお客さんに寄り添いながら、「誰かに想いを届ける」という時間を、今日も路地の奥で束ねている。
あなたの大切な人へ。次の"素敵な時間"は、この扉の向こうにあるのかもしれない。
場所:大阪府大阪市北区中崎3丁目3-6(人通りのある通りから左へ折れた路地、建物1階の左側)
営業時間:12:00 - 18:00 / 定休日:火、水(祝日以外)
※詳細・最新情報・全国発送のご案内は Instagram にて
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