中崎町・路地裏の止まり木。気楽な休憩所。
―中崎町の路地裏で見つけた、世界で一番小さな「実家」。
迷い込んだ路地の先、都会の喧騒を忘れさせてくれる、ある飲食店の物語。―
迷路のように入り組んだ路地が魅力の大阪・中崎町。
その一角に、ひときわ異彩を放つ屋号を掲げる居酒屋があります。
その名も「人情ぶち込み酒場 トリプルエルボ」。
接客を担う「あんちゃん」こと山下あんずさんと
厨房を守る「おかん」こと山下きわさん。
母娘が語る、店づくりの想いと、この街への深い愛着を伺いました。

名前に込めた、飾らない遊び心
軽く自己紹介と、お店の紹介をお願いできますか。
あと中崎町で見かけたときに、なんて呼んだらいいかもお願いします!
山下きわさん(以下きわさん).お店の名前は「人情ぶち込み酒場 トリプルエルボ」です。
営業時間は16:30~24:00です。
料理は23:00、ドリンクは23:30ラストオーダーです。
えっと、名前は山下きわです。
呼び方か~、「きわ」ですかね。
山下あんずさん(以下あんずさん).長女のあんずです。
なんて呼ばれても全然大丈夫です。
友人は「あんず」「あんちゃん」「ずっちゃん」とかで
呼んでくれますね。
きわさん.あと長男と次男がいて、長男が出資者・オーナーです。
次男は店回りのこと、デザインからマーケティングから何からやってる感じです。
あんずさん.それからアルバイトの子が2、3人手伝ってくれてます。
この店名の由来を教えていただけますか?
きわさん.由来? 無いです。(笑)
えええ(笑)
きわさん.ほんまに特別な事は無くて・・・(笑)
車の中で「店の名前どーする?」みたいな感じで話してたんですよ。
しょうもない案ばっかり出てきてた中で
突然頭の中に「トリプルエルボ」が、降りてきました。
降りてきたんですね。(笑)
きわさん.はい。(笑)
で、息子も爆笑しながら「それでええやん!それにしよ!」
という感じで、流れで決まったというか・・・。
これだけやと、なんか寂しい?というかしっくり来なかったんで
「人情ぶち込み酒場」も足した感じです。
あとトリプルは、私に子どもが三人いるからです。
そんなしっかり考えた感じの名前じゃないんですけど、
お客さんが名前で盛り上がってくれてたりするのを見かけて
この名前で良かったな、と思ってたりします。
名前で盛り上がってたのですか。
きわさん.そうです。お店の窓拭きしてたら通りがかりの人が
「トリプル?なんか3つもあるやん」とか
「トリプルラリアット!あ、エルボーやん!」
みたいになんか盛り上がってて。
なんかうまく言えないですけど、良かったなって~。笑い話です。
30年の時を経て、再び戻ってきた街、中崎町
お店を出す場所に中崎町を選んだのは、どのような理由があったのでしょうか?
きわさん.それがね、最初は江坂の方で1年くらい探してたんです。
でも、なかなか「ここや!」っていう物件に出会えなくて。
あんずさん.私は江坂の方で、飲食店に勤めてたんです。
ありがたいことに、そこでファン?っていうんですかね。
お客様も付いてくれたのもあって、自分でお店出そうかなってなって。
それで江坂で探してたんですよ。
きわさん.そんな時に、次男が
「俺、中崎町に店持ってるから、そこでやったらええやん」って
声をかけてくれたのがきっかけなんです。
ありがたかったんですけど、
「いや持ってるなら、もっと早よ言ってくれる!?」と思ったのは内緒です。笑
ここだけの話ってやつですね(笑)
きわさん.ただ、中崎町って私にとって全然知らない場所ではなかったんですよ。
結婚してから、実は中崎町に住んでまして。10年くらいかな。
子どもたちの手を引いて毎日保育園へ通っていたのはいい思い出です。
ちなみに私の母も、今もこのすぐ近くに住んでいます。
まさか30年経って、あの頃歩いていた場所で自分のお店を持つことになるとは
本当に不思議な縁ですよね。

母から娘へ受け継がれる、「正直な味」、「家族の”美味しい!”」
お店で提供されているお料理についても、大切にされていることを教えてください。
きわさん.「自分の子供たちが食べて、美味しいって言うてくれるもの」を
そのまま正直に出すこと。これに尽きますね。
「こんな家で出してるもので本当にええんか・・・?」
と思うこともありますし、特別な技術があるわけでもないんですけど
それでも家族や自分が食べて、美味しいと思うものを出すようにしてます。
あとは、家に帰ってきて親に「こんなん作ってくれ」みたいなの作ってあげたい。
みたいなイメージもやんわりありますね。
もう本当に、家の味というか、家で親が子に食べさせる感じというか。
初めての方にオススメの一品はありますか。これ食べとけ、みたいな。
きわさん.私個人的には「竜田揚げ」、店的には「鍋」です。
店的には!?(笑)
あんずさん.基本的におすすめは鍋を進めるんですけど
辛いのがダメな人には「おかんの逸品料理」を紹介しますね。
店的にはお鍋がオススメですが、きわさん個人的には竜田揚げなんですよね?(笑)
あんずさん.家族個人個人で好きなもの・オススメが違うんですよね(笑)
何品かありまして・・・。
長男は、竜田揚げとオムレツ。
次男は、きんぴらごぼう。
って具合でして。
あ、僕も、きんぴらごぼうが好きです。
あんずさん.ありがとうございます(笑)
私は、竜田揚げとタコの酢の物です。
おかん(きわさん)お手製のたれで。
あと鍋はもう全員好きですね。
お母さまも、オススメは竜田揚げですかね。
きわさん.はい。
これは私の母から受け継いだ味なんです。
母に作ってもらって、ずっと美味しい美味しいと食べてて、
あと友達の家に行ったり、よそでは食べなかった味ですねえ。
先ほども言いましたが、特別なこと何かしてるかって言われたら、
本当になんも思いつかないんですけどねえ・・・。
あとオススメメニューにしたいけど
仕入れが高すぎて没のメニューもあったりします。(笑)
あんずさん.あるね。(笑)
でもそういうのは、出せるタイミングが来たら
別メニューでパッと出すとかして、やっていけたらいいなあとは思ってます。
でももう全メニューがオススメです!!(笑)

お酒のラインナップも、少し珍しいものがあるんでしたっけ。
あんずさん.そうですね。日本酒もワインも焼酎も。
種類も豊富だと思います。
変わり種なら、ハブ酒とかありますよ。
ハブ酒!?
(ボトルを見て)あ、思ったよりおしゃれですね。
きわさん.ハブとかまんま入ってるような印象ですよね、ハブ酒って。
あんずさん.ジンジャーエールとかコーラで割ると、
不思議とお菓子みたいに飲みやすくなるんですよ。
美味しいですよ。
あと年に一度しか取り寄せられない
「木札のオクタンバ(奥丹波)」っていう日本酒とか。
色々ご用意してます。

中崎町というコミュニティの温かさ
来てほしいお客様像ってありますか。
あんずさん.無いですね。どんな人にでも来てほしいですもん。
ビール一杯だけでも、お喋りしに来るだけでもいいんです。
何かに悩んでたり、少し疲れて不安になった時に、
ここに休憩しに来たらええんちゃうかな、って思います。
ちなみにMAX何人入れますか。
あんずさん.30人くらいですね。
団体さんでも問題ないですよ。
コースは用意がないんですけど
予算とかで相談してくれれば上手いことやりますし。
なんでも気軽に相談してください。
メニューに無いものとかでも「あの材料でこれ作って」くらいの感じでも
おかんが作ってくれたりできますし。
逆に一人飲みも大歓迎です。
ふらっと来て、ちょっとお喋りするなり、ゆっくり飲むなり。
本当に色んな人に、気軽に来てほしいですね。
お客様との印象的なエピソードなどを伺えますか。
あんずさん.「雰囲気ええなあ」「なんか落ち着いて飲めるわ」と
言ってくれるお客さんは多い気がします。
お客さんが「飲みぃや~」と声かけてくださって一杯いただいたりとか。
隣に座ったりとか、法律的にアウトなことはしてないですからね!(笑)
分かってますって(笑)。
常連さんが増えたりしてますか。
あんずさん.前のお店のお客様が来てくれたりとか、会社がこの辺のお客さんもいますね。
中崎町のお店同士の繋がりについてはいかがですか?
きわさん.お好み焼きの「どんどん亭」はこの子ら(あんずさん)が小さい頃からずっとお世話になってましたね。
ここが出来て店主がお父さんの頃から通ってました。
ちなみにそのお店、今は息子さんが継いでます。
息子さんが小学生の時に厨房に入ってお手伝いしてたのを思い出しますよ。
あと、うどんの「今日亭」さんにもお世話になってます。
誕生日の時に使わせてもらったり、ここも出来た時から行ってて。
両方とも30年来のお付き合い?になるかな。
あんずさん.このお店に来てからは、近所のプリン屋さん「兎の社」さんと
すごく仲良くしてもらってます。
初めは通りがかって気になって、中でプリン食べながら店長さんと話してて、
うさぎの話で盛り上がったり(笑)。
そこからインスタで繋がって、お店も来てくれるようになりました。
それから「cafe mizuiro」さん。
トリプルエルボをやりだしてから、中崎町で一番最初に仲良くさせて頂いたお店さんです。
店主の方お姉さんが面白い方でして、
「お店の名前が『みずいろ』なのって、やっぱり水色が一番好きだからですか?」
って聞いたら
「いえ、私の一番好きな色は黄色です」と平気でお答えになられる、
強烈に面白いお姉さんです。(笑)
ちなみにお店の名前が「cafe mizuiro」なのかは、ぜひ直接お店に行って聞いてみてください!
きわさん.あと、謎の長男(笑)が
「神社近くのカフェのオーナーと仲良しやねん!」って
謎にドヤ顔で言い切ってたなあ。
あんずさん.何よそれ。(笑)
きわさん.思いつきやけど「中崎町会館」みたいな
中崎町で飲食店やってる人だけが行けて「不安になったらここにおいで」
みたいなんとか出来ても面白そうやね!
いいですね!面白そう!
日々楽しく
今後、どのようなお店にしていきたいとお考えですか?
あんずさん.どのようにか・・・その場の思いつきで動いてるんですけどね。
きわさん.なんか色々突発的なんですよ。急にイベントしたりするかもしれんし。
いきなり「お化け屋敷」とかも、次男は言い出しそう・・・(笑)
遊びながら仕事をしたい。
遊びながら、楽しくやっていきたい、ですかねえ。
あんずさん.ね。でも、今後どうなっていくかは、私たち自身も分からないかも。
そういえば
「〇月は”おかんの日”でサービス!」「〇月は次男誕生日だからハブ酒1杯無料」
みたいなのやりたいなみたいなの、次男が言うてた気がします。
お店を一言で表すと。
あんずさん.ええ、なんやろ。真面目に答えないと。
え・・・「エルボー」・・・?
きわさん.なんやそれ!
なんかいつも以上に明るくないな~。
「ドカーン!」じゃないけど明るい空気みたいなのを私は伝えたい!
この記事を読んでる方へメッセージをお願いします。
あんずさん.この鍋は、ここでしか食べられへんで!
きわさん.なんやそれ!(笑)なんや喧嘩腰やなあ!(笑)

『人情ぶち込み酒場 トリプルエルボ』
インタビューの最後、照れながらも笑顔で「エルボ」ポーズを決めてくれたお二人。
「トリプルエルボ」
その名前とは裏腹に、凝り固まった心を力強くほぐし、明日へ向かう活力をくれるお店です。
中崎町の迷路のような路地を抜けた先。
「明るいみんなのおかん」きわさんと「気さくな接客がウリの看板娘」あんずさんが待つ店で、止まり木のようにひと休み。
気楽な休憩所で、人生の元気をフルチャージしてみては、いかがでしょうか。

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